足音

夏休みのことです。

広い本家の庭で、従兄弟たちと楽しく鬼ごっこをしていた私は、

四つ上のお姉さんの声で立ち止まりました。

「みんな止まって!」

いつも落ち着いていて、私や他の従兄弟たちのように

はしゃいだり声を上げて騒いだりしないそのお姉さんが、

突然大声を上げたので、驚いてしまったのです。

他の従兄弟たちも、何事かとお姉さんのもとに集まりました。

「いきなりどうしたの?」

同い年の男の子が聞くと、お姉さんはうつむいたまま言いました。

「・・・・・・何か、いる」

みんながきょろきょろと周りを見回しますが、知った顔ばかりです。

「何かって、なにが?」先ほどの男の子が尋ねますが、

お姉さんは小さくかぶりを振ります。

「わからないの。だけど、足音が・・・・・・」

そして、こう言いました。

「足音が、多いの」

みんなが首をひねります。

石畳だから、芝生や土よりも足音は響くでしょう。

それにしても、「多い」とは?

「足音が、聞こえる」

そう言ったきり、お姉さんは黙り込んでしまいました。

小さな子たちはすっかりこわがってしまい、

鬼ごっこは切り上げることになりました。

みんなが靴を脱ぎ、広い和室に戻りました。

クーラーのない部屋だったので、

私は部屋の隅に行き、扇風機のスイッチを入れました。

羽根が音を立てて回り始めた、その瞬間です。

全員が、一斉に私のほうを見ました。

やがてお姉さんが、震える指先をこちらに向け、

言いました。

「どうして回りはじめたの、あの扇風機」

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